天得院のキキョウ

梅雨の晴れ間をぬって、東福寺塔頭・天得院(てんとくいん、京都市東山区)へ出かけた。「花の寺」として知られ、夏のキキョウ、秋のハギの時期に、毎年「特別公開」されている。
天得院は、豊臣家とゆかりの深い寺で、住職の文英清韓が起草した方広寺の鐘銘「国家安康 君臣豊楽」が徳川家康の怒りを招き、豊臣家滅亡のきっかけになった話は有名だ。
寺は豊臣家とともに取り壊され、現在の建物は江戸中期の再建という。枯山水庭園は桃山時代の作庭で、往時の面影を伝えているとされる。
キキョウは、スギゴケで覆われた庭一面に植えられている。薄紫、白の花がコケの深い緑に映えて美しい。茎を伸ばし、凛(りん)と咲く風情は、華やかな内に禅寺らしい潔さを感じさせる。「特別公開」は7月16日までだが、花の見ごろは8月いっぱい続くそうだ。
お堂の縁先に座り、抹茶を一服。東福寺北門前「鶴屋弦月」製のキキョウをかたどった生菓子が添えられた。目と口で清そな花の趣を味わい、心が和んだ。期間中は夜間拝観(〜午後8時半)も。300円。