かぎ富「釜そば」

まず店の外観を見てほしい(写真1)。屋根の形、2階の高欄…そう、近くの銀閣寺そっくりなのだ。
続いて、はし袋。「かぎ富の 目出たき蕎麦を 召上れ 初めつるつる 末はかめかめ 主人敬白」の狂歌がおもしろい。
さらには「如意山麓名物 釜そば」(680円)。中身はきつねそばなのだが、器が変わっている。信州の駅弁などでおなじみの「釜めし」を思わせる1人前用の特製陶器釜(写真2)だ。.
どんなご主人か、顔は見なかったが、ずいぶん遊びごころのあるご仁に違いない。奇をてらっただけでないのは、そばを食べると分かる。色のやや濃いそばは2番粉を使っているのだろう。手打ちらしく「つるつる」どころか「かめかめ」の強い歯ごたえがある。
きつねの味つけ、つゆは、京風にしてはおとなしい。これも主役のそばを引き立てる演出だろう。口の中で一体となり、そばの風味が高まる。セットで頼んだミニ玉子どんぶりも、卵のとじ加減が絶妙。
観光地周辺には、いちげんの客相手に外見だけで中身の伴わないものも少なくないが、ここは違う。遊びごころの裏に、したたかな腕を感じた。
そば、うどん各種。おはぎのほか、名代の蒸しようかん「日吉羹」など甘味目当ての常連客も多い。京都市左京区白川通銀閣寺交差点北東。

★★★★★(観光地にも名店あり)