枚方市長逮捕

枚方市の中司宏市長(51歳)が大阪地検特捜部に逮捕された。市の清掃工場建設をめぐる談合の疑いが持たれている。
中司市長とは旧知の仲だ。彼が早稲田大を卒業して、京都で新聞記者としてスタートを切ったころだから、もう30年近く前になる。
端正な顔つき、スマートな体型で、物静かなタイプだった。がさつな記者稼業にはあまり向いているように見えなかったので尋ねたことがある。「なんで記者なんかになったんや?」。持ち場の五条署で雑談していた時だ。
「いえ、ずっと新聞社にいるつもりはないんです」。意外な答えに驚いた。聞けば、彼の父は大阪府議で、その跡継ぎを考えているらしい。日ごろ、小さな声でボソボソとしか話さないのに、この時は明快に言い切ったのが印象に残っている。
果たしてその後、彼は東京の政治部に転勤した。大阪本社から東京本社への異動自体が珍しいのに、首相番をしていると聞いて、なにやら「政治」のにおいを感じたものだ。
「新聞社をやめ、選挙に出ることになりました」。首相の推薦文のついた「著書」を持って京都府警の記者室に姿を見せたのは、その数年後のこと。やさ男のイメージは消え、中年太りで物おじしない話しぶりに、思わず「えらい貫禄ついたなあ」と声をかけた。
以後、大阪府議から衆院落選を経て枚方市長へ。若き日の「夢」へ着実に歩んでいるかに見えていた。「容疑者」として顔を伏せ、連行される写真を見て、人の有為転変を思う。