裕次郎ホーム

JR小樽駅に「裕次郎ホーム」がある。ガイドブックに、そう書いてあったので、それはぜひ行かねばと思った。
札幌からの快速電車を降りて、ホームに立つ。「おたる〜、おたる〜」。駅員のマイクにまじって、なにやら音が聞こえてくる。「ん?」。耳を澄ませば、歌ではないか。裕次郎だ。
新千歳、札幌方面からの快速が入る4番ホームに「裕次郎ホーム」の名が付けられたのは4年前。小樽駅の開業百周年記念事業として、妻の石原まき子さんも出席してテープカットが行われたという。愛称の付いたホームは全国でここだけらしい。
ホームには、身長183cmという裕次郎等身大パネルが立つ。1978(昭和53)年5月にテレビ番組の撮影で小樽駅に来たときの写真だそうだ。バックにはヒット曲が絶え間なく流れている。脚の長さに気がひけるが、パネルの横に並んで記念写真をパチリ。
裕次郎ファンにはたまらないスポットだが、気になるのは他にだれもいなかったこと。一緒に快速を降りた旅行客らはそのまま階段を下りて改札へ。気づかないのか、関心がないのか。おかげで周囲を気にすることなく、ゆっくり「記念撮影」できたのはよかったが。
今年で没後20年。昨年は、前後して亡くなった美空ひばりさんの記念館(京都・嵐山)が閉館した。こちらは再開計画もあるそうだが、いずれにせよ「去る者は日々に疎し」の観は否めない。
翌日、帰りにもう一度ホームをのぞいたら若い女性2、3人が「あー、ここ、ここ」と言いながらパネルのほうへ。思わず後ろ姿に「来てくれて、ありがとう」と声をかけた。
 
 【写真=JR小樽駅4番線の「裕次郎ホーム」。終日、ヒット曲が流れている】