五日天下

明智光秀が本能寺に織田信長を急襲したのは1582(天正10)年6月2日未明。羽柴秀吉との山崎の合戦に敗れ、小栗栖であえない最期を遂げたのが13日夜。世に言われる「光秀の三日天下」だが、正味は12日間あった。
鳴り物入りで発足した安倍改造内閣遠藤武彦農水相は、1週間しかもたなかった。金融機関並みに土日をのぞいた「営業日」でいえば、大臣の座にいたのはわずか5日だけということになる。
自ら組合長を務める農業共済組合が、国の農業被害救済制度を悪用して不正に補助金を受けていた。その事実を3年も前に会計検査院から指摘されながら、不正受給分の返還さえしていなかったという。あきれた話だ。
それにしても、農水相が3代続きで不祥事とはどうしたことか。「政治とカネ」をめぐる強い批判の中で行われた閣僚人事だ。安倍首相は、こんな人物をどんな基準で、どうして選んだのか、任命に至る経緯を国民に詳しく説明すべきだ。会計検査院は、詐欺まがいの不正を知っても「検査」だけで「報告」はしなくてよいのか。その点も知りたい。
政治活動費の多重計上が発覚した坂本由紀子外務政務官もこの日辞任した。どちらも事実上の更迭だが、会見ではしおらしく「国民に政治不信を感じさせた」「政治家はクリーンでなければならない」などと述べていた。心底そう思うなら、二人とも即刻議員を辞職したらどうか。
戦国の世の光秀は重傷を負った後、家老に介錯を頼んで自ら腹を切っている。