心得違い

北京駐在のベトナム大使が中国外務省から2度にわたって呼び出され、ベトナムメディアの中国報道について抗議された、との記事が先日の新聞に出ていた。
問題にされたのは、ベトナム国営テレビや新聞が一連の中国産品の粗悪問題を取り上げ「消費者は低品質の中国製品に慎重になるべきだ」などと伝えたことらしい。中国側はベトナム大使に「報道を厳重に管理するよう」求めたという。
政府の尻をたたけば報道を「管理」できると考えているところが、いかにも中国らしい。大使は「世界中で報じられているのと同じ内容だ」と反論したが、中国側はベトナム製品の輸入管理強化など「報復」措置を通告したそうだ。
何という尊大な態度だろう。確かにベトナムは中国が長年支配してきた地域であり、今もその最大の貿易相手国になっている。だからといって、自国の不祥事で立場の弱い他国政府に圧力をかけ、メディアの報道を抑え込もうなどとは心得違いも甚だしい。
北京五輪を1年後に控えて、国際的な信用を得たい中国の思いは分かる。そのために中国がなすべきことは臭い物にふたではなく、実態の的確な把握と防止策、公正な情報公開だろう。
6日シドニーで行われた米中会談では、胡錦濤国家主席が一連の粗悪品問題を重要視している姿勢を見せ、ブッシュ大統領に安全性強化への取り組みを約束したそうだ。強大な米国にはこれで、弱小のベトナムには手のひらを返したような態度ではつじつまが合わない。
信頼される大国になれるかどうか、国際社会が注目していることを中国は知るべきだ。