KY理事長

自分の都合でしか物事を判断できず、大局がとらえられない人のことを、はやり言葉で「KY」と言うそうだ。「空気が読めない」の略。だれが言い出したのか知らないが、テレビ番組などで不祥事に鈍感な政治家や企業人らに対してよく使われている。
その語法に従えば、日本相撲協会北の湖理事長もたいがい「KY」だ。東京相撲記者クラブ会友の元NHKアナウンサーが「相撲評論家」の肩書でテレビに出演し朝青龍問題で協会を批判したとして取材証を没収、ニュースで騒ぎが大きくなるとあわてて返還したという。
理事長は「記者クラブ員は相撲協会を批判してはいけない」とでも考えているのだろうか。記者クラブ員なら批判するな、評論家として批判するならクラブ員に出している取材証を返せ−そんな理屈だ。
結局、元アナウンサーは理事長との話し合いで「協会を批判したつもりはない。肩書には注意する。これ以上問題をこじらせたくない。今後も協会の応援団の一員で」などと述べ、矛を収めたように見える。しかし、こんなあいまいな決着でよいのかと思う。
この際、東京相撲記者クラブは、北の湖理事長に対し、その存念をきちんとただしておかねばならない。取材証は自由な取材・報道に必要なものであり、決して批判封じの「便宜供与」ではないはずだ。どの社会でも、健全な批判なくして健全な発展はあり得ない。
「どうりで八百長疑惑が週刊誌にしか載らないはずだ」なんて、国民から無用の誤解を招かぬためにも、記者クラブは公開の場でき然とした姿勢を示すべきだ。