御三家のピンチ

現代用語事典の御三家が、存廃のふちに立っているらしい。「イミダス」(集英社)、「知恵蔵」(朝日新聞社)、「現代用語の基礎知識」(自由国民社)で、軒並み発行部数がピーク時の20%以下に落ち込んでいるそうだ。
これまで通りに08年版の発行が決まっているのは老舗の「現代用語の基礎知識」だけ。「知恵蔵」は休刊、「イミダス」も大幅な路線転換が検討されているという。
背景には、インターネット検索の普及が挙げられている。重くて、かさばる紙の事典は場所を取る。新版への買い換えも要る。その点、ネットは省スペース・省資源。手軽で無料、日々更新されるから、中身は常に最新だ。利用者が紙からネットへ流れるのも無理はない。
といっても、だれもが情報の送り手になれるネットの特性上、その質が玉石混交であるのは避けがたい。先日、石原裕次郎の身長について、雑誌で「182cm」と読んだ記憶があるのでネット百科で確かめようとしたら「183cm」との記述に当たった。
1cmの差とはいえ、正確を期すため同種のウェブページを巡覧しているうちに気がついた。そのほとんどがネット百科の引用、ないしは丸写しだった。匿名で簡単に他人の著作を写し、取り込めるネットの世界では、不確かな情報をうのみにして拡大再生産する危うさを併せ持つ。
ネットの便利さを認めつつ、御三家のピンチを憂える。