まる姫「焼鯖ずし」

洛北・大原から若狭に抜ける国道367号は、通称「鯖(さば)街道」と呼ばれ、花折あたりから朽木にかけては道路の両側に「鯖ずし」ののぼりを立てた店が並ぶ。先日、小浜へ出かけた帰り道、その中で面白い1軒を見つけた。
道路わきに駐車場を設けたプレハブ店舗の「まる姫」。入り口の戸に「グルメ雑誌、テレビ局の取材お断り」の紙が張られている。マスコミ嫌いなのか、客の目を引くアイデアなのかは分からないが、墨で黒々と大書した文字に書き手の強い個性が感じられた。
「何しましょ」。出てきたおばちゃんのそっけない応対。「生鯖? 焼き鯖?」「焼き鯖ずし1本ください」「ハイ、1300円」。残り2本しかない陳列ケースから1本を取り出し、小袋に入れてニューッと差し出した。
店の雰囲気、おばちゃんの応対から全く期待していなかったが、帰って包みを開けてびっくり。焼き鯖ずしの立派なこと(写真1)。さっそくレンジでチン、脂が浮き、熱々の香ばしいところをいただいた(写真2)。
ひと晩タレにつけ込んだという焼き鯖は滋味満点。しゃりには焼きゴマがまぶされ、鯖との間にしょうがが挟まれている。黒酢のきいたしゃりは酸っぱいが、ゴマとしょうががまろやかさを醸し、絶妙のバランスで焼き鯖のうまみを引き立てている。
張り紙と同様、自己主張の強い焼き鯖ずしに感心した。滋賀県高島市朽木栃生。

★★★★★(焼き鯖と酢飯のコンビネーションが絶妙)