メディアの冒険

10月に入り、全国紙が相次いで従来の殻を破って、新しい模索を始めた。
ひとつは、産経新聞マイクロソフト社と提携して開いたニュースサイト「MSN産経ニュース」。取材した情報は新聞の締め切り時間を待たず、ネットへ優先的に流す「ウェブ・ファースト」が売り物らしい。
これまで他紙に追いつかれては困るとして新聞の発行時間まで掲載していなかった「特ダネ」も、随時ネットに上げていくという。ネット利用者は歓迎だろうが、これでますます紙の新聞が不要とされる心配もある。新聞社にとっては大きな冒険だ。
もうひとつは、朝日、読売、日経3紙の提携話。ネット分野での共同事業を展開するほか、販売業務や災害時の相互援助でも手を組むという。いまのところ、ネットでの主要記事や社説の読み比べ以外、具体的な提携の中身や目指す方向性は明らかにされていない。
それでも、これまで互いに取材、論説、販売で激しくしのぎを削ってきた3紙だ。手をつなぐというだけでも大きな変革だ。
読者や広告主の「新聞離れ」に歯止めがかからない。新聞誕生以来最大のピンチとの見方もある。日本を代表するマスメディアが旧来の固定観念や確執を捨て、大胆な方針転換に踏み切ったところに、危機感の強さがあらわれている。