「室町」の復権

小さいときから歴史が好きだった。小学4年生のころ、林間学校で吉野へ行ってからは南朝の忠臣楠木正成、正行父子の「ファン」になった。その分、敵の足利尊氏が憎く思えて仕方なかった。「花の御所」跡の近くで育ちながら、室町幕府には親しみが持てなかった。
京都三大祭りの一つ、時代祭もずっと室町時代を排除してきた。祭りが始まったのは、日清戦争直後の1895年。明治の京都人は、後醍醐帝に弓を引いた尊氏を「逆賊」として、祭りに加えることを認めなかったらしい。足利嫌いはかつての自分だけではなかったのだ。
そんな時代祭に今年から室町時代列が登場するという。考えてみれば、維新勤皇隊から平安時代までさかのぼる時代行列に、室町時代だけ欠いている方が不自然だ。時代が変われば見方も変わる。いつまでも「逆賊」呼ばわりは気の毒だ。もっともな見直しだと思う。
新設される室町時代列は、足利将軍を中心に細川、山名氏などが従う幕府執政列と、風流踊りを舞う洛中風俗列から成る。総勢約70人。よろい、かぶとなど衣装の新調に約1億円かかったという。
室町時代は「町衆」と呼ばれる新興階級が力を持ち、こんにちに続く京都文化の礎が築かれた時期でもある。103回目の祭りにして初めて加わる「室町」の人たちには、胸を張って都大路を練り歩いてほしいと願っている。
あしたの行列が楽しみだ。