証人喚問

「事実は小説より奇なり」という言葉がある。数多くの事件を取材していると、時に思わぬ展開に驚かされることがある。「まるで小説の世界だ」「こんなことって、本当にあるのか」と想像を超える事態に戸惑いさえ覚える。
少し意味合いは異なるが、きのう衆院であった守屋武昌前防衛事務次官の証人喚問をテレビで見ていて、似たような思いを抱いた。よくもこんなことが、平気でまかり通ってきたものだ。
出入り業者との接待ゴルフは年に20回以上、通算で200回以上。夫婦でゴルフセットを2度も贈られていた。ゴルフ場では偽名を使っていたというから、後ろめたさはあったのだろう。旅行に飲食、賭けマージャン…絵に描いたような「官業癒着」である。
業→官への「接待」の見返りに官→業の「便宜供与」があるのは、この種の「癒着」にお決まりの図式だ。その徹底解明は当然だが、それにしてもと思うのは、こんな人物に牛耳られていた防衛省の問題だ。
風さいの上がらない外見からは想像しにくいが、省内では人事をはじめ絶大な権限を握り「天皇」とまで呼ばれていたらしい。その専横に異議を唱えることは難しく、業者との無軌道な付き合いにも、みんな見て見ぬふりをしていた可能性が高い。
「組織防衛」「保身」「事なかれ主義」といった身内の論理が通用しないのは、年金不正や薬害放置、一連の食品偽装などでも明らかだ。その意味で、特異な個性による個人的な不祥事にとどまらず、組織全体の問題としても考える必要がある。