ずっこけ竜馬

嵐の大海原で、木の葉舟のように揺れる帆船。かじを握る小沢代表が甲板に吹き飛ばされる。ロープを操っていた菅、鳩山両氏がすばやく小沢代表を抱き起こし、3人で支え合う。やがて風雨がおさまり、タイトルが浮かぶ。「生活維新」−。
夏の参院選前に民主党が流していたテレビCMだ。「維新」とあるから、帆船はさしずめ海援隊、かじ取り役の小沢氏は維新回天のヒーロー、坂本竜馬といったところか。
竜馬は薩摩、長州の積年の対立を解き、薩長同盟を成立させて倒幕運動を大きく前進させた。かたや平成の竜馬は「大連立」に失敗、辞任発言も撤回し、恥をしのんで代表の座にとどまることになった。
参院選後、一貫して攻勢に立ってきた民主党が、今回の騒ぎで一転、党内に亀裂を招き、自ら苦境に陥った。福田首相との密室会談で何がどう話し合われたのか、詳細は分からないが、自民党にすれば思わぬところで敵のタイムリーエラーを拾った思いだろう。
策士、策におぼれる。辞意表明の際「民主党もさまざまな面で力量が不足し、政権担当能力に疑問が持たれ、次期衆院選での勝利は難しい情勢にある」とぶち上げた言葉は、そっくり自らの上に返ってきた。
小沢代表は昨夕「あの時(辞意表明)は気力が途切れ、プッツンした」と釈明、「不器用」「口べた」「説明不足になりがち」とひたすら低姿勢で反省の弁を繰り返した。まるで、だだっこの泣きべそ会見。こんな竜馬では「維新の夜明け」など望むべくもない。