「フードファディズム」

副題に「メディアに惑わされない食生活」とある。著者は高橋久仁子群馬大教授(食糧化学)。玉石入り交じった身の回りの食情報に踊らされることなく、正しい食生活と健康のあり方を考えようとの提言だ。
高橋さんによると「フードファディズム(Food Faddism)」とは「食べものや栄養が健康や病気へ与える影響を過大に信奉したり評価すること」。好影響だけでなく、悪影響をことさらに言い立てる論も、これに当たる。
あるある大事典」の虚偽放送は記憶にまだ新しい。ねつ造は論外だが、その後もお手軽な「健康情報」はマスメディアで花盛りだ。いわく「○○で激ヤセ」「△△は肝臓に悪い」「がんに××」…。もっともらしい数値や用語を使う分、場合によってはかつての「迷信」よりタチが悪い。
フードファディズムがはびこる「土壌」として高橋さんは、次の4点を挙げる。
①十分過ぎる食料が供給されている②過剰な健康指向や、健康であらねばならぬという「強迫」が存在する③食料の生産や製造、流通に対して漠然とした不安や不信が漂っている④大量の情報が提供され、論理的思考をいとう人々がたくさんいる−。
「情報をうのみしない」「『健康食品』で健康は買えない」「『売れる情報』にはカラクリがある」「食生活に一夜漬けは効かない」…著者は、豊富な事例をもとに懇切に説く。
「食べものを『体に良い・悪い』でのみ論じたがる風潮を反省すべき」「『これさえ食べれば健康万全』という食品はない」「そこそこの健康を考えてほどほどに食べる」との指摘に逐一うなずいた。中央法規刊。1200円。