名札のない病室

友人が、入院中の知り合いの見舞いに行ったときのこと。エレベーターで当該フロアまで上がったのはよいが、病室が分からない。入り口の名札を頼りに部屋を探したが、目当ての名前は見つからなかったそうだ。
診察中や検査で患者がベッドを離れている時もある。面会時間の決まりもある。外部からの見舞客は、いきなり病室を訪れるのではなく、ナースステーションにその旨を告げて案内してもらうのが常識だ。
そうは言うものの、実際には気安い仲間や面会時間外の場合など、詰め所に立ち寄らず、病室へ直行する場合も少なくない。しかし、あらかじめ部屋の番号をよく確かめておかないと、上記の友人のように廊下でまごつく羽目になる。
個人情報保護法の施行で、入院患者の名札を病室入り口に掲出しない病院が増えている。友人が行った病院も、患者本人の意向を聞いて名札の出す出さないを決めていたらしい。
今月初め、佐賀県内で入院患者が外部から入ってきた男にいきなり拳銃で射殺される事件が起きた。この病室には被害者の前に暴力団関係者が入っていたそうだ。容疑者は先日逮捕されたが、どうやら「人違い」による殺人の疑いが強いという。
病室には名札が出されていなかった。結果論ではあるが、もし名札があれば、悲劇はなかったかもしれない。「プライバシー保護」も、時と場合で難しい。