もっと選択肢を

来年2月に行われる京都市長選の構図が固まってきた。すでに弁護士の中村和雄氏(53歳)が共産の推薦を受けて立候補を表明、これに対して民主が立候補を要請している市教育長の門川大作氏(57歳)に自民、公明が「相乗り」する動きを見せているという。
他にも1人名乗りを上げているが、このままでは実質的に従来と同じ共産を除くオール与党対共産の「2極」選挙になる様相だ。多彩な顔ぶれが並んだ東京都知事選、大阪市長選などに比べると、有権者にとって選択肢が少なく、選挙としての面白みに欠ける。
国会での自民と民主の激しい攻防を見ていると、地方の首長選とはいえ、なぜこうもあっさり手が組めるのか、不思議に思う。「国と地方とは別。国政の枠に縛られず、地方は地方の実態に即して」などと言われるが、有権者には分かりにくい。
門川氏は、同じ教育畑出身の現職桝本頼兼市長の懐刀として信任があつく、早くから後継候補と目されていた。国政での対立から自民の推薦候補に民主は同調しにくく、民主が先に推薦して、そこへ自民、公明が乗るというシナリオが描かれたらしい。
民主は独自候補擁立の「名」を取り、自民・公明は影響力保持の「実」を取る−これで長年なじんだ共産外しの「オール与党」はまるく収まる。よく考えたものだ。
都心空洞化、交通渋滞、景観保全、観光振興、不祥事根絶…京都市政の課題は山積している。そのかじ取り役をこんな党利党略や数合わせで決められてはたまらない。選挙の主役は、有権者であることを忘れてもらっては困る。