「いけず」言わずに

祇園の有名料亭「一力」のある花見小路四条界わいは、夕方ともなるとアマチュア写真愛好家が通りの両側にずらりとカメラの放列を敷く。だらりの帯にこっぽりで石畳を歩いてお座敷に向かう舞妓さんの「出勤」風景を撮るのが目的だ。
最近は、わざわざこれを目当てに来る外国人団体客も多いらしく、中にはマナーの悪い行いで芸舞妓が困っている、との記事が先日の新聞に出ていた。2、30人で待ち構えて強引に写真を撮る、着物を引っ張る、走って追いかけて体を触るといったケースもあるそうだ。
記事には「一部の観光業者がお座敷を利用するのではなく、写真を撮るためだけに連れて来ている」「文化的な理解不足で、芸舞妓を観光客向けのキャンペーンガールと勘違いしている」といった関係者の苦情が紹介されている。
地元ではパトロール隊を編成、花見小路通を中心に、強引に写真を撮らないよう注意を呼びかける自衛策に乗り出したという。芸舞妓はお座敷で遊んでもらうのが仕事。「通勤」途上で物珍しそうに騒がれるのは迷惑千万というわけだ。
言い分は分かる。高価な着物を引っ張ったり、体に触れるなどは論外だ。でも、通りの端から撮る写真ぐらい「いけず」を言わずに、認めてもよいのではないか。
善きにつけあしきにつけ、祇園や舞妓は京都を代表するシンボルのひとつになっている。毎日のことだから舞妓さんも大変だろうが、ツンケンとそっぽを向くだけでなく、たまにはニコッと笑顔でも見せたらどうか。バチカンの衛兵など観光客には実にフレンドリーだ。