ミシュランが何だ

15年近く前。週1回、夕刊で「ラーメン探検」と称して京都のラーメン店巡りを連載したことがある。ご当地ラーメンブームのはしりで東京のテレビ局や雑誌が「京都ラーメン」を取り上げ始めたころだ。
大きなカメラやライトを担いだ取材クルーが大挙して店に押しかけ、一口食べただけのリポーターが「おいしい」を連発するシーンに、地元ファンとして鼻持ちならない気がしていた。「テレビ局の大名取材に何が分かるか。正解を見せてやろう」。そんな気負いがあった。
ラーメン好きの同僚6、7人に呼びかけて「探検隊員」を編成した。毎週、狙いを定めた店に全員が出向く。取材は必ず単独で、店には気づかれないよう、あくまで客として、もちろんラーメン代は自腹−が鉄則だ。
後日、感想を持ち寄り、掲載が決まればカメラマン同行の上、身分を明かして再取材した。味は人によって好みが違うから、一方的な「格付け」は避け、良い点ばかりでなく「バイト任せ」など店には耳の痛いことも字にした。幸い読者には好評で、連載は半年続いた。
世界的に有名なグルメガイド『ミシュラン』の東京版が発刊され、話題になっている。こちらもフランス人による「覆面取材」が基になっているそうだ、その調査法や評価の星の数をめぐっては異論も強いようだが、しょせん外国人の好みによるリポートだ。
それを金科玉条のごとく持ち上げて、ヤイヤイ騒いでいるほうがどうかしている。それなりに興味はあるが、もっと自分たちの味覚に誇りと自信を持とうではないか。