私のしごと館

えーっ、オープン4年で、もう閉鎖? そんじょそこらのラーメン店ではない。関西文化学術研究都市の一角を占める巨大施設「私のしごと館」(京都府精華町木津川市)の話だ。
独立行政法人の見直し・整理統合を進める渡辺喜美行革相が、所管の厚労省との話し合いの中で言明した。開館以来、毎年20億円近い赤字が続いているというから、閉鎖はやむを得ない、というよりもはや当然だろう。
こんにちの事態を危ぶむ声は開設当初からあった。総事業費581億円。学研都市の広大な一等地にゆったりと構えた建物は、小・中学生の「職業体験施設」とはおよそ不釣り合いな規模、豪華さだった。
足場の悪い学研都市へどこから、どれだけの利用者が見込めるのか。巨大な施設や組織運営の採算はとれるのか。関係官庁の「天下り先」になるだけではないか。そんな当たり前の疑問も、巨額の公費投入に弾むツチ音にいつの間にかかき消された。
「京都の社寺や世界遺産の宇治・平等院と組み合わせた修学旅行コースを作って」などと安穏な構想を語っていた関係者の夢は、本当に「夢」で終わってしまった。
小さなラーメン屋でも、不振となれば店主が責任を持って店をたたむ。お上の肝いりで巨費を投じてつくった施設の責任は、いったいだれが取るのか。オープンの日、晴れがましくもテープカットに並んではさみを入れたお歴々にぜひ聞いてみたい。