取材はタダか

先週、九州・天草で行われた大相撲冬巡業で、報道各社が勧進元から1社当たり1万円の「入場料」を要求され、19社が金を払って取材した、との記事が新聞に載っていた。
報道目的の「取材」に金が要るのか、払うべきなのか。各社は異例の申し入れに戸惑い、勧進元に抗議したが「赤字」を理由に聞き入れられなかったという。
その後、続報はなく、現地での騒ぎは収まったかに見える。しかし、これとは別に、今回の問題はもっと大きく、マスメディアの取材のあり方に一石を投じたように思われる。
相撲に限らずスポーツ、美術、音楽、映画、芸能、旅行、グルメ…これまでメディアの取材は、PRしたい主催者側の思惑もあってフリーパスが多かった。どれも必ずというわけではないが、長年の慣行で取材する側もされる側もそれが当たり前と思い込んできた節がある。
しかし、時代は違う。テレビのインタビューに公然と「出演料」を要求するプロ野球選手がいるらしい。ある記者は「あれっ、新聞はないの?」とけげんな顔をされたそうだ。事件などで電話取材による数行のコメントに「謝礼」を求める識者も少なくない。
どんなビジネスでも、所要の経費負担は付き物だ。報道機関といえども、多くは私企業だ。取材で得たニュースを「商品」として利潤を稼いでいる。わざわざ時間を割いて取材に応じる側が「対価」を要求しても何ら不思議はない。
報道機関が「公益」を担っているのは確かだが、決して「特権」があるわけではない。寝た子を起こす気は毛頭ないが、いつまでも「公器」だけを理由に「タダ」では通るまい。