薬物ショック

アメリカがくしゃみすれば、日本は風邪をひく」。政治、経済だけではない。どうやらスポーツの世界にも当てはまるようだ。
米大リーグが発表したドーピング実態調査報告書に、日本のプロ野球関係者9人の名前が含まれているという。阪神・ウィリアムス、前西武のカブレラら有力選手も挙げられており、衝撃は大きい。
薬物使用はいま世界のスポーツ界を揺るがしている。最近でも、テニスの元世界女王、ヒンギス(スイス)が陽性反応で引退を表明、シドニー五輪の女子陸上金メダリスト、ジョーンズ(米国)はステロイド使用を認めて全記録の抹消と追放が決まった。
大リーグでは、91年にコミッショナーが薬物禁止を通達しながら、有効な対策を打ち出せなかったといわれる。今回、実名公表という「荒療治」でそのウミを一気に出した形だが、それだけ切迫した危機感が背景にあったのだろう。
ウィリアムスは、渡米している阪神球団の渉外担当に「おれは全くクリーンだ」と話しているそうだ。その通りならば結構だが、公表された報告書には1820ドルの金額とウィリアムスの氏名、日付の入った小切手のコピーも添付されているらしい。
薬物問題は、しょせん選手自身のモラルにかかるところが大きい。しかし、だからといって「本人を信じるしかないだろう」(岡田監督談)などとのんびりした構えでは、いずれ大リーグの二の舞になりかねない。球界挙げての対応が急がれる。アメリカが風邪なら、日本では肺炎だ。