消える巨人戦

先日、東京へ行った折、八重洲口の地下階段で「GIANTS PRIDE」と書いた大きな看板を見かけた。G党でない当方は知らなかったが、今季から巨人選手のヘルメットにもこのロゴが書かれているらしい。

「栄光の巨人軍、誇りを持とう」とでも言いたいのだろうか。球団にすれば、ここ数年ふるわないチームに奮起を促したいとの思いからだろうが、裏を返せば、それだけ選手たちに「誇り」がなくなってきたと球団自らが認めているようなものだ。

きょうから1週間、巨人戦のテレビ中継(地上波)がないそうだ。ひとケタの視聴率しか稼げない「弱い巨人」にテレビ局が愛想を尽かした格好だ。かねて指摘されてきた事態ではあるが、とうとうそれが現実になった。

ドラフトを骨抜きにし、金にあかしてなりふり構わず他チームから四番打者を引き抜いてきた球団。それを傘下の新聞、テレビを総動員して無批判のまま持ち上げてきた親会社。「巨人至上主義」と呼ばれるこうした姿勢が行き詰まった結果と言える。プロ野球を見直す良いきっかけだ。

ある意味で、巨人もかつての「栄光伝説」から解放されるチャンスだ。「PRIDE」なんて、きれいな言葉ではなく、泥の中からはい上がる覚悟と努力が必要だ。親会社も、性急に結果を求めず、他球団のようにじっくり選手を育てる必要性にそろそろ気づいたほうがよい。

現金な民放各局にもこんにちの責任なしとしない。ボクシングの亀田世界戦を持ち出すまでもなく、スポーツを「興行」として視聴率しか眼中に入らない番組づくりでは、やがてその視聴率から手痛いしっぺ返しを食うことを胸に刻んでおくべきだ。