煉瓦亭「ハヤシライス」「元祖オムライス」

東京・銀座の煉瓦亭(れんがてい)は、日本で最も有名な洋食屋といわれている。創業は1895(明治28)年。カツレツをはじめ、エビフライ、白身魚のフライ、カキフライ、さらには洋食に添える千切りキャベツやごはんを皿に盛り付けて出したのもこの店がはじめとされる。
ハヤシライスの起源には諸説あるが、煉瓦亭では日露戦争後に従業員が自分たち用に作った「まかない料理」から生まれたと伝わっている。戦後の人手不足で忙しくなった従業員たちが日本のどんぶりをまねて、ハッシュドビーフをごはんにかけてよく食べていた。それを見た客が自分も食べたい、と言い出したのがきっかけでメニューに加わったそうだ。
細かく刻んだ牛肉とタマネギを特製のドミグラスソースで煮込む。ふつうタマネギはよく煮込まれてとろとろになっているところが多いが、ここのタマネギはしゃきしゃきしている。かむとその甘味が広がり、自慢のソースと実によく出合う。1400円。値段は少し高めだが、これまで食べたハヤシライスの中で間違いなくナンバーワンの味だと何度もうなずきながら口に運んだ。
同行の相棒は「元祖オムライス」(1250円)を注文した。こちらも先々代主人が、外国にピラフという米を使った料理があることを知り、オムレツの具にごはんを入れて「まかない」に出したのが始まりという。と言っても、ケチャップライスを薄焼き玉子でくるんだ今のオムライスではない。ごはんにミンチ、タマネギ、マッシュルームをまぜ、溶き卵と一緒にいためる。出来上がりは、一見洋風チャーハンの趣だが、中は卵が半熟のまま残り、他の具にからんで全体のうまみを引き立てている。「元祖」の面目躍如といったところだ。
池波正太郎も通ったという名店。人気におぼれず、従業員のしつけが行き届いている。
  
【写真左=ハヤシライス、同右=元祖オムライス】
★★★★★(文明開化の味がする)