らーめん福三「福三ラーメン」

京都のラーメンと言えば、とんこつととりがらでだしをとった濃厚こってりしょうゆ味、というのが通り相場。ところが、最近、これに魚介系のスープを加えた「ダブルスープ」が流行している。
「らーめん 福三(ふくさん)」(京都市北区)の「福三ラーメン」(並600円、大700円)は、そのはしりだ。とんこつをベースにとりがらや野菜を長時間煮出し、しっかりとろみのついたスープながら、煮干し魚系の香りが漂う。ギトギトした濃厚さを残しながら、後口が意外にさっぱりしているのはこのせいだと思う。女性客が多いのも、このあたりに理由がありそうだ。
めんは中細ストレート。具は、チャーシュー2枚にメンマ、ネギ。化学調味料は一切使っていない。
オーナーは、和食料理30年という異色の経歴。人づてに聞いたところでは、料亭に勤めていたある日、なじみ客の大学教授から「限られた人に味わってもらう高級な料理もいいが、もっと大勢の人に親しんでもらえる食べ物もいいよ」と言われたのが転身のきっかけになったそうだ。
ラーメンのサイドメニューとしては珍しい鯖寿司(2カン、300円)にも、かつての腕前がのぞく。脂ののった分厚いサバをやわらかい昆布で包む。すし飯の酢加減が絶妙。「これだけでも食べに来たい」という知人がいた。他に、刻みチャーシューと野菜をごはんにまぜていためた豚菜(とんさい)どんぶり(小300円、並500円)もユニークだ。
前回来たのは、2カ月ほど前。その時のラーメンに比べて、今回は自慢の魚介系だしがやや後退、とりがらが少し前に出ている印象を受けた。オープンして、まだ3年半。探究心おう盛なオーナーによって進化を続けている過程なのだろう。
  
【写真は左から福三ラーメン大、名物の鯖寿司、豚菜どんぶり】
★★★★(ダブルスープのはしり)
※07年6月に閉店しました。店主は、元の日本料理の世界に戻ったそうです。けっこうはやっていただけに、もったいない気がします。