原了郭「黒七味」

小さな写真では分かりにくいだろう、と思い、つい筒を振る手に力が入ってしまった。おわんに取ったうどんすきの中央、黒く見えるのが「黒七味」。かけ過ぎた。薬味は少量で味覚を刺激し、料理のうまみを引き立てるもの。「これでもか」と振りかけるのは邪道である。
祇園・花見小路の原了郭(はらりょうかく)は、1703(元禄16)年の創業。代々「了郭」を名乗り、現当主で13代目になるという。
初代は、赤穂浪士で有名な原惣右衛門の一子、儀左衛門。浅野家断絶後、漢方を学び、香煎(こうせん)を商った。香り高い薬味を煎(い)り、湯に入れて飲む清涼剤の一種で、評判を取った。
「黒七味」は10代目の創始。原材料は、唐辛子、山椒の実、白ゴマ、黒ゴマ、けしの実、麻の実、青のり。普通の七味と変わらないが、これらを煎った後、丁寧に手でもみ込むのがポイントらしい。唐辛子の赤やサンショウの緑がなじんで全体が黒っぽく焦げ茶色になるそうだ。
筒の口を開けるだけでツンと香りが立つ。ほどよい辛味で、料理の味を損なうことはない。ただし、この日のうどんすきはかけ過ぎたので、最後まで舌がヒリヒリ…。
和洋中、いろんな料理に試したい。京都市東山区。先祖にふさわしく、忠臣蔵ゆかりの祇園・一力の斜め向かいに店を構える。丸木筒入り12g、1260円。
  
 ★★★★★(上品な香りが身上)