三朝庵「カレー南蛮」

明治40年前後のこと。西洋渡来の「ライスカレー」が世に広まり、同じ外食産業のそば屋がピンチに追い込まれた。「ごはんの上にカレーがのっているなら、そばにカレーがのっていてもおかしくないはず」。こう考えたのが、東京・早稲田のそば屋「三朝庵(さんちょうあん)」の初代、加藤朝治郎だったという。
めん+カレーという意外な取り合わせが受け、ハイカラ好みの学生街で大ヒットしたそうだ。ほぼ同時期に大阪でも誕生したようだが、東京での「カレー南蛮」はこの三朝庵が発祥とされる。
店に入ると、天井からさがった品書きを見て食券を買う。「カレー南蛮」「うどんにしますか、そばですか」「そばで」「ハイ、780円」。早稲田最古参、400年の歴史を持つという老舗そば屋だが、店内の雰囲気はまるで学生食堂。おばちゃんの応対も気さくだ。
やがて出てきた元祖・カレー南蛮(そば)=写真=。とろみのきいたカレーあんがたっぷりかかり、めんが見えない。具は豚肉とタマネギだけ。別皿に刻みネギが付いている。
豚肉はお愛想程度だが、タマネギはシャキシャキとしてうまい。カレーは辛すぎず、よく和風だしとなじんで味わいが深い。ただ、このあんに対して、そばが細手で存在感が薄い。バランス的には、うどんのほうが合うと思う。他に、カレーせいろ、カレー丼なども。東京都新宿区馬場下町。早稲田大文学部前。
 
★★★(文明開化の味がする!?)