日清「レンジどん兵衛 カレーうどん」

新シリーズ「NEXT GENERATION」の「どん兵衛」カレー版(写真1)。このシリーズは熱湯を使わず、容器に水を入れて電子レンジで「チン」するのが特徴だ。
中身は、生めんと液体スープ、粉末スープ、かやくに分かれている。全部一緒に容器内にあけ、所定の線まで水を注ぐ。あとは中ぶたをしてレンジで7分。熱々のカレーうどんの出来上がりだ(写真2)。
うどんは、平打ち風の中太タイプ。生めん特有のもっちりした食感がよい。カレーうどんの命「あん」のとろみもなかなかうまく出ている。もう少し緩くてもよいが、水とレンジだけでこれだけの出来具合はさすがというほかない。
カレーは、和風だしのきいた甘めだが、なかなか濃厚。底に沈んでいた豚肉には甘辛い味が付いており、刻みキツネなどとともに生めんと絡んで全体の味わいを引き立てる。
説明書きどおりの水を入れたはずなのに、上記のようにだしつゆが少なく、コテコテ気味になってしまった。水の量は経験的に調節するしかないのだろうか。

★★★★(簡便だが7分は長い)
【おことわり】写真1=作り急いで外装の写真を撮り忘れたので、日清食品のHPより転載させてもらいました。

薬物ショック

アメリカがくしゃみすれば、日本は風邪をひく」。政治、経済だけではない。どうやらスポーツの世界にも当てはまるようだ。
米大リーグが発表したドーピング実態調査報告書に、日本のプロ野球関係者9人の名前が含まれているという。阪神・ウィリアムス、前西武のカブレラら有力選手も挙げられており、衝撃は大きい。
薬物使用はいま世界のスポーツ界を揺るがしている。最近でも、テニスの元世界女王、ヒンギス(スイス)が陽性反応で引退を表明、シドニー五輪の女子陸上金メダリスト、ジョーンズ(米国)はステロイド使用を認めて全記録の抹消と追放が決まった。
大リーグでは、91年にコミッショナーが薬物禁止を通達しながら、有効な対策を打ち出せなかったといわれる。今回、実名公表という「荒療治」でそのウミを一気に出した形だが、それだけ切迫した危機感が背景にあったのだろう。
ウィリアムスは、渡米している阪神球団の渉外担当に「おれは全くクリーンだ」と話しているそうだ。その通りならば結構だが、公表された報告書には1820ドルの金額とウィリアムスの氏名、日付の入った小切手のコピーも添付されているらしい。
薬物問題は、しょせん選手自身のモラルにかかるところが大きい。しかし、だからといって「本人を信じるしかないだろう」(岡田監督談)などとのんびりした構えでは、いずれ大リーグの二の舞になりかねない。球界挙げての対応が急がれる。アメリカが風邪なら、日本では肺炎だ。

義士まつり

「松の廊下」での刃傷事件を国元へ急報した早かごの足跡をたどって、落語家の三遊亭楽松さん(43歳)が東京から12日かけて走破、きのう無事赤穂にゴールインしたそうだ。
東京−赤穂約650km。元禄の早かごはそれを昼夜兼行で4日半で走ったという。普通の旅人なら2週間以上、飛脚でも8日はかかったそうだから、その速さが分かる。宿駅で乗り継ぎ時間がかかったはずだが、1分も休まなかったとしても時速6kmほどになる。
急使に立てられた萱野三平は途中、摂津・萱野村の生家の前を通りがかり、はからずも母の葬儀に出合う。同行の早水藤左衛門から「ひと目母上に会ってこい」と勧められたが、主君の一大事を託された身。泣きながら手を合わせ、かごを急がせたと伝えられる。
JR播州赤穂駅近くに残る「息継ぎの井戸」は、息も絶え絶えに城下へたどり着いた2人がひと息ついた場所として知られる。電話もメールもなかった時代、想像を絶する苦闘の道中だったに違いない。
三平は、父の反対であだ討ちに参加できず、忠孝の板ばさみとなって討ち入り前に切腹する。27歳。仲間と行動できず、無念の最期だったが、後世の人たちは高輪・泉岳寺に供養墓を建て、四十七士と一緒に手厚く祭っている。
きょうは義士まつり。京都・山科、赤穂などゆかりの土地で三平も同志とともに胸を張って練り歩いたことだろう。

カンジ悪い漢字

今年の世相を表す漢字に「偽」が選ばれた。清水の舞台で恒例の大筆をふるった森清範貫主は「こういう字が選ばれるのは日本人として誠に恥ずかしく、悲憤にたえない」と慨嘆した。
1年を象徴する漢字だ。もっと明るく、よい字はなかったか。そうは思うが、2位は「食」、3位「嘘」、4位「疑」と続いたそうだ。食品の産地偽装、賞味期限の改ざん、人材派遣の偽装請負、国会での偽証疑惑、公務員の有休虚偽取得…残念ながら、そんな年だったのだ。
モーセ十戒でも仏教の五戒でも「偽証」「妄語(うそ)」は、殺人や盗みなどと並ぶ罪に挙げられる。ローマの「真実の口」では偽りのある者が手を入れると手首が切り落とされる、あるいは手が抜けなくなる。日本ではうそをつくとえんま大王に舌を抜かれる…。
古今東西、それだけ戒められても「うそ」「偽り」は後を絶たないということになる。わが国最初の「和同開珎」が鋳造された翌年、もう偽金作りの取締令が出ているそうだ。
「偽」は「人」べんに「為」と書く。だから、人の行為には偽りが多いのだという説がある。しかし、白川静『常用字解』によれば、これは誤った解釈で、もとは変化して他のものになるという意味だったらしい。
藤堂明保ほか『漢字源』の「偽」の項には「為は人間が手で象をあしらって手なずけるさまを示す。作為を加えて本来の性質や姿をためなおす」ともある。
文字に善しあしの責任はない。問題は、その行為の「中身」なのだ。

取材はタダか

先週、九州・天草で行われた大相撲冬巡業で、報道各社が勧進元から1社当たり1万円の「入場料」を要求され、19社が金を払って取材した、との記事が新聞に載っていた。
報道目的の「取材」に金が要るのか、払うべきなのか。各社は異例の申し入れに戸惑い、勧進元に抗議したが「赤字」を理由に聞き入れられなかったという。
その後、続報はなく、現地での騒ぎは収まったかに見える。しかし、これとは別に、今回の問題はもっと大きく、マスメディアの取材のあり方に一石を投じたように思われる。
相撲に限らずスポーツ、美術、音楽、映画、芸能、旅行、グルメ…これまでメディアの取材は、PRしたい主催者側の思惑もあってフリーパスが多かった。どれも必ずというわけではないが、長年の慣行で取材する側もされる側もそれが当たり前と思い込んできた節がある。
しかし、時代は違う。テレビのインタビューに公然と「出演料」を要求するプロ野球選手がいるらしい。ある記者は「あれっ、新聞はないの?」とけげんな顔をされたそうだ。事件などで電話取材による数行のコメントに「謝礼」を求める識者も少なくない。
どんなビジネスでも、所要の経費負担は付き物だ。報道機関といえども、多くは私企業だ。取材で得たニュースを「商品」として利潤を稼いでいる。わざわざ時間を割いて取材に応じる側が「対価」を要求しても何ら不思議はない。
報道機関が「公益」を担っているのは確かだが、決して「特権」があるわけではない。寝た子を起こす気は毛頭ないが、いつまでも「公器」だけを理由に「タダ」では通るまい。

いいちょ「ラーメン」

ひところ行列のできる新興店とはやされたが、いまや押しも押されぬ中堅どころ(写真1)。店内にも落ち着きができてきた。
創業は1998年。「背脂系こってりしょうゆ味」に分類されるオーソドックスな京都ラーメンだ。
めんは中細のストレート。具は、チャーシュー、ネギ、メンマ。鶏ととんこつでだしをとった濃厚スープに背脂がギラギラと浮く。
つくり、味わいともに、この系統の本家ともいうべき「ますたに」をほうふつさせる。テーブルの上には、ラーメンたれ、酢などが並び、好みによって味を調節できる。
1.5玉の「大」(600円、写真2)を注文した。1玉あたりまではおいしく食べられたが、しだいにめんの粉っぽさを感じた。スープの深みという点で、まだまだ「ますたに」に比べて研究の余地はありそうだ。
もっとも、そのぶんクセがなくて、女性客らには評判がよいらしい。
ラーメンのほか、塩ラーメン、みそラーメンも。それぞれに並(1玉)、大(1.5玉)、特大(2玉)がある。やきめしとのセットは100円引き。店内禁煙。京都市左京区下鴨東半木町。市バス「府立大学前」西50m。

 ★★★★(もうひと深み)

「憎まれ役」

自民党幹事長、野中広務氏(82歳)とプロ野球監督、野村克也氏(72歳)の「対談」というより「対論」集だ。帯に「はい上がった男の格差社会憂国論」とある。
政界と球界、場こそ違うがともに百戦錬磨、知謀策略を尽くして宿敵と渡り合ってきたご仁だ。あえて両者を「憎まれ役」の一語でくくった編集者のセンスが光る。
ともに鋭い分析力と豊かな表現力には定評がある。その2人が歯に衣(きぬ)着せず発する「憎まれ口」だ。面白くないはずがない。両氏の顔と口調を思い浮かべながら、一気に読み通した。
「憎まれ役」の矛先は「好かれ役」に向かう。野中氏の場合は小泉純一郎氏。「小泉さんは自民党ではなく、日本をブッ壊した」「政治家はマスコミではなく、歴史に判断されるべき」「自民党と巨人軍はパフォーマンス重視で凋落した」
野村氏の敵役は長嶋茂雄氏だ。「パフォーマンス男はリーダーに向かない」「長嶋監督以降、巨人軍は球界の紳士でなくなった」「リーダーの器以上に組織は育たない」
話題は政治、野球から格差社会まで。言いたい放題の観、なきにしもあらず。それでも単なる毒舌悪口に終わっていないのは、それぞれが歩んできた道への強い自負や愛着、期待と幅広い社会的関心があるからだろう。
「心の底から本音で問題点を語る男はほとんどいません。保身と現世利益に目が眩んで、口に糊している人間がなんと多いことでしょうか」との野中氏の剛速球が胸元を突く。
京都府出身、B型、短気、たばこ酒ダメ、甘党−との共通点も面白い。文藝春秋刊。1143円。