光の街・桂坂

クリスマスイブのイブ、うわさの桂坂(京都市西京区)へ車で出かけた。
桂坂と言えば、洛西の丘陵地に広がる高級住宅街。この時期、家々が玄関や外壁にカラフルなクリスマス・イルミネーションを競うように施し、評判になっている。
国道9号沓掛口から住宅街へ。しばらく行くと、ある、ある。うわさどおりのキラキラだ。赤や青に明滅するモミの木、首を振るトナカイ、壁をよじ登るサンタ、笑顔のミッキーマウス…。趣向を凝らしたイルミネーションの家が次から次へと目を楽しましてくれる。
この一帯、元は竹やぶで、約20年前に開発されたころは何もなく、夜は暗く寂しいところだったはずだ。だれの発案かは知らないが、それがいまや師走の風物詩、「光の街」に発展した。
最近この地へ引っ越した同僚に尋ねたことがある。「あれって、町内で申し合わせてるの?」。そうではなく、強制でもないという。最初のころは住宅メーカーが無料で配ったこともあるらしいが、いまは個々の家が近くのホームセンターで思い思いのものを買ってくるのだそうだ。
同僚いわく。「ぼくは嫌やったんやけど、家内が『隣近所みんなしたはる』て言うし」。12Wの一番安い3000円のセットを買い、早朝に切れるタイマー式にしているという。電気代はもちろん自前。高級住宅街の「お付き合い」も大変だ。
おかげで、われわれのようなよそ者までがお相伴にあずかれて。メリークリスマス!

岡山雄神「あたご梨」

岡山は「フルーツ王国」を自称している。白桃、マスカット、ピオーネ…。ネットには「フルーツ王国岡山検定」なるものまである。
「あたご梨」も王国特産のひとつ。戦時中の1943(昭和18)年、県内に導入され、いまでは岡山市西大寺の雄神・西隆寺地区を中心に栽培面積、収穫量とも全国一を誇るという。
赤ん坊の頭ほどもある日本一大きなナシとして知られ、実の重さを枝が支えきれないため、農園には棚が設けられるそうだ。大きさが分かるよう、いただいた「あたご梨」を普通の柿(左)と並べて撮影した(写真1)。中には1.5kgにも上るものもあるそうだ。
実は真っ白。「二十世紀」ほど水っぽくはなく、ザラついた食感はあるが、歯切れはよく、大柄に似つかわしくない繊細で上品な甘味がある(写真2)。
旬は今ごろだが、日持ちがよく、冷暗所なら1カ月ぐらい平気だそうだ。その間も熟成が進み、メロンのような香りとコクが加わるという。すぐ食べてしまい、惜しいことをした。

★★★★(実は大きいが味は繊細)

日清「中央軒長崎ちゃんぽん」

「中央軒」は大阪・難波に本拠を置く長崎ちゃんぽんのチェーン店。大阪を中心に20店舗を展開する。
長崎名物のちゃんぽん、皿うどんは明治時代に長崎・四海楼の陳平順が考案、母国からの留学生らに食べさせたのが発祥とされる。中央軒はそれを40数年前に関西へ初めて紹介したとして「関西元祖」を称している。
今回の日清カップ版(写真1)は「中央軒の味を家庭で」と先月から近畿2府4県で限定発売された。ポークのうまみに野菜を加え、まろやかな白濁スープに仕上がっている。
中央軒の特徴であるペッパー感を抑えた魚介のほのかな風味を目指したそうで、日清ならではの安定感がある。豚肉、エビ、イカ、かまぼこ、キャベツ、きくらげなど、ちゃんぽんらしい多彩な具もぬかりない(写真2)。
問題は、めんだろう。カップめんであることを勘案しても、もう少し太く、つややかで弾力もほしい。
「長崎」をうたいながら発売が「近畿」に限定されているところに、そのあたりの自信のなさを思うのは考えすぎだろうか。250円。

★★★★(めんの向上を望む)

「となりのクレーマー」

その1。百貨店のブランドショップ。革かばんの内側が色落ちして、書類が汚れて困る。「よくあるんですよね、色移り」との女性店員の応対にキレた。「物入れへんかばんて、あるのか!」。大声を出したら、上司らしき男性がすっ飛んできて、立派な別室に招き入れられた。
その2。電器量販店。電子手帳の電池交換を頼んだら「データ入ってますか。消えても知りませんよ」。何という言い草だ。ここでも「データ入れるのが手帳やないか!」と喝ッ。にぎやかな店内が凍りついた。店員はあわてて電池を取りに走った。
どちらも、血気盛んなころのわが体験。スキー宿予約の重複受理による行き先変更を電話一本で告げられ、怒鳴ったら旅行社の責任者が自宅まで謝りに来たこともある。
本書では「イチャモンをつける人、理不尽な要求をする人、無理難題を言って楽しむ人」を「クレーマー」と呼ぶ。これに照らせば、正当なるわが身などただの「うるさい客」に過ぎない。
著者の関根眞一氏は、百貨店の元「お客様相談室長」。2年前に買った毛皮の虫食い、10年前のブラウスにできた穴、抗議に来た高速道路代の請求…。やくざに呼び出されたり、何時間も「軟禁」されての罵倒など、いやはや大変な事例がつづられている。
関根氏いわく。お客様の申し出は感情を抑え、素直に聞く▽非があれば真しに謝る▽正確にメモを取る▽現場を確認する▽対応は迅速に▽不当な金品要求には断固応じない−。
権利意識の強い時代だ。クレーマーはどこにでもいるし、だれもがなり得る。とは言え、当方など「クレーマー」にはなっても「相談室長」には到底なれそうにない。中公新書ラクレ。720円。

年賀状

年賀状を書く時期になってきた。郵便局の窓口で受け付けが始まり、ポストには専用の投函口も設けられている。テレビコマーシャルで「元日配達にはなるべく25日までに」などと流されると、よけいに気ぜわしくなる。
先日の新聞に、電子メールによる年賀状の是非を問うた意識調査の結果が出ていた。それによると、20−50代の男女400人のうち、仕事上の年賀状をメールで受け取った経験がある人は62%。63%の人がメール年賀状に「賛成」と答えたそうだ。
はがきが要らない。印刷の手間や費用も不要。一度に多くの人に送れる。年賀メールが普及したら、さぞ楽になるだろうと思う。
その一方、同じ調査で自らの年賀状をパソコンや携帯電話のメールで出すと答えた人は12%にとどまった。年賀メールに「反対」を唱えた人の64%は「手抜きと思われる」をその理由に挙げたという。
年賀状の起源はその昔、年始回りの代わりに出したあいさつ状だとか。一種の「手抜き」と言えなくもない。筆からペンへ、手書きから印刷へ、「手抜き」も時代とともに進化する。
もう十数年前に「虚礼廃止」を宣言して年賀状をやめた友人がいる。「最初の数年はきまり悪く思ったこともあるけど、定着したらどうってことないよ」と今では涼しい顔だ。
こちら、廃止の「勇気」なく、メールには「抵抗感」がある。ならばパソコンで手抜きながらも、いつも通り出すしかない。この週末あたり、そろそろエンジンをかけねば、と思っている。

広島お好み焼き「大野/長久」

広島へ日帰り出張。となれば当然、昼はお好み焼きだ。
地元紙の専門サイト「炎の鉄板」を立ち上げた仕掛け人Tさんにあらかじめ電話で取材、取っておきの情報を仕入れておいた。
教えてもらった4軒の中から、さてどこへ行くか。ここがよさそう、いやここも…。えーい面倒だ、どっちも行ってしまえ。ということで、生まれて初めてお好み焼き屋の「ハシゴ」。路面電車を乗り継いで昼食に2軒回ってしまった。
◆大野
Tさんのイチオシ。1961(昭和36)年の創業。おかみさんのおばあちゃんから女3代で築いてきた老舗とか(写真1)。
定番の「そば肉玉」(写真2)を注文。なんと450円。広島大の学生客が多く、値段は17年前から据え置いているそうだ。かあちゃん代わりの心意気がうれしい。
ふんわりとやわらかな生地が特徴。日本酒でほぐすというめんは実にまろやか。野菜はカツオと昆布の粉をふりかけて風味を増している。あっさり味に甘いオタフクソースがぴったり合う。広島市中区千田町。★★★★★
◆長久(写真3、4)
こちらは2004(平成16)年開業の新興店(写真3)。「厚さ3cmの鉄板でからりと焼く」とのフレーズに引かれた。
注文は同じく「そば肉玉」。ランチタイムサービスで730円が630円に。見た目が薄く感じた「大野」に比べて、ここのは関西のお好み焼きと同じような厚さだ(写真4)。
コテで半分に切って、分厚い「地層」を観察した(写真5)。上から青のり、カツオ、卵でといた生地、そば、豚肉、キャベツ、モヤシ、底に薄い生地。そばの上にお好み焼きを単純に重ねた関西の「広島焼き」「モダン焼き」とはかなり趣が違う。
焼き加減が強すぎて、具のうまみがおさわっている印象を受けた。広島市中区幟町。★★★



■写真6=懐かしい「京都市電」が現役でまだ活躍していた(広電本社前駅

日清「ミルクシーフードヌードル」

先月発売されたばかりの新製品。食べる前はさして期待していなかった。車で言えばマイナーチェンジ、フロントグリルや内装の一部を変えただけ−レギュラー版と変わりばえのしないパッケージの地味なデザインも手伝って、そんな先入観があった(写真1)。
ひと口目。やっぱり…。あっさりとして「ミルク」の風味はほとんど感じない。具も同じだから、いつものシーフードヌードルとほとんど変わらない。
ところが食べ進むうちに、だんだんスープが濃厚に思えてきた。事前によくかきまぜたつもりだが、底に調味料が沈んでいたのかと思うほど。めんのつややかさも伝わってきた(写真2)。
最後は実にクリーミー、クラムチャウダーを思わせる味に。もはや「カップヌードル」の域を超えて、別の食品の感。お供は、ごはんよりパンが合うと思った。
同社のホームページで明かされている開発秘話が面白い。それによると、そもそも開発のきっかけは約10年前。「シーフードヌードルに牛乳を入れて食べるとうまい」。そんなうわさを耳にした開発研究員が自ら試してみたそうだ。
脂肪分の多い牛乳はしつこく、低い牛乳はさらりとし過ぎ。両方とも塩分を強く感じる。牛乳に生クリームを加えるとカルボナーラのようなコクは出るが、しつこくて、とても1杯食べきるのは難しい…試作に試作を重ねた努力の結晶だ。155円。

★★★★★(「努力」は日清伝統の味)